その日のニュースで特に印象に残ったものについて思ったことなどを。

KADOKAWA、アマゾンと紙の本を直接取引 大手で初 : 日本経済新聞

出版大手のKADOKAWA(角川)が4月からインターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)と紙の書籍・雑誌の直接取引を始めた。出版物を書店に届ける取次を介さないことで物流を効率化。消費者に早く商品を送り届けられるようにする。

日本経済新聞

昨日の早朝に日経電子版の速報に流れてきた記事。「4月から始めた」と過去形で書かれていることから関係者にとっては周知の事実だったのかも知れないけれども記事になったことで公になった形、なのだと思います。(自分は知らなかった。)

「中央集権的に出版物の流通を担うことで、コストを下げる」という従来の取次の存在意義を見直す動きであり、とても興味深い。

Amazonと取次の関係?

出版業界に少なからず接している人には馴染みのある「取次」という言葉、実際には知らない人も多い気がする。

端的に言えば、「出版物の卸業者」それが取次。出版物を作る(メーカー)である出版社から商品を受けて、全国の書店(小売店)へと配送していく。

Amazonも規模こそ違えど、出版物を一般消費者へ直に売っている一つの書店(小売店)と捉えることができる。出版社から直接商品を仕入れているのではなく、出版物の卸業者・取次に搬入されてからAmazonの倉庫へと商品が供給されている。

Amazonへ商品共有している取次は取引量順に「日本出版販売」が一番多く、次に「トーハン」「大阪屋」が続いていると言われている。

なぜ、出版社から直接卸していなかった?

Amazonほどの巨大な販売力・物流拠点を持っているところが今まで直接仕入れをなんでしていなかったんだろうか。

恐らく出版社の数の多さが一つの原因じゃないかと思う。

Amazonの日本進出するにあたって、出版物の商品供給を受ける必要があった。出版物というものの特性上、顧客のニーズに合わせて特定の出版社だけじゃない豊富な品揃えを準備しなければならない。そこでいちいち、4000社以上あると言われている日本の出版社に「Amazonに商品を提供してください」と取引を持ちかけているのは手間。実際に取引を締結したとしても、出版社が商品を作るたびにAmazonの倉庫に「A出版社の納品に参りました。」「B出版社の納品に参りました。」・・・・「ZZZZ出版社の納品に参りました。」と出版社ごとの納品が大挙することになってしまう。物流拠点が数少ない日本参入初期にはこれは負担になってしまう。

そこで、まとめて仕入れを取り持ってくれる仲介人・エージェント的存在が必要だったのだろう。

すでにその4000社以上の出版社と取引関係のある、「取次」に対して「今度はAmazonにも商品供給してください」という取引をすれば、解決。

取次からしてもめちゃくちゃ大きな書店が1軒、取引を始めてくれただけだから話が早い。(「取引総数」の上での話で、実際にはそんな簡単じゃないだろうけど)

出版社からすれば取引をする相手卸業者の「取次」だけを相手にすればいいので、何も変化はなくて済む。変化があったとしたら卸業者さんがめちゃくちゃ大きな書店さんと商売始めたなら、商品作る量を調整しないとな、くらいかな。

そんなわけで取次を通じて商品供給を受ける方が日本市場に参入する初期には手間・コスト的にも利点が多かったのだろう。

直接取引の利点とはなんだろう

では、なんで今回、大手では初という直接取引を始めることにしたんだろう。

やっぱり、

「中間業者が入るとマージン取られるから」

じゃないかな。 言い方悪いのかもしれないから訂正すると、

「大量の商品運ぶのがわかっているんだから、卸業者持っていくのとぱして直接、Amazonに運んじゃおうよ」

といったところかな。

例えば、直接取引を始める以前なら

  • 出版社が取次に商品を納品するまでのコスト
  • 取次が書店・小売店に納品するまでのコスト

がコストとしてかかっていたのが、直接取引することによって

  • 出版社(KADOKAWA)が、書店(Amazon)に納品するまでのコスト

だけで済むようになる。字面だけの単純計算なら半分に減るわけだ。コストだけじゃなくて、通過するルートが減るから商品の到着日数も削減できる。

日本の出版物は「平等な条件で出版物にアクセスすることができるようにする」という理念の下、委託販売制度(再販制度)・定価販売制度、これらの制度によって「販売する時の値段」「販売する時の発売日」などが全国均一にされている。そして、「期限付きだが返品が可能」なのである。これは逆に言えば商品の値下げ圧力や、早売り競争が弱い。

そのような環境の中で、コスト削減・流通スピードのアップをできれば差別化できる。

連結子会社9社を吸収合併することで、スケールメリットを生かせる規模に成長したKADOKAWAと日本での販売規模が大きくなりコスト削減・運送時間削減により顧客サービスの向上を図りたいAmazonの思惑が合致したことで今回の直接取引に至ったのだろう。

一般消費者からすれば、自分が本を手にするまでのルートなんて関係ないわけで、単純に今後どのようなサービスとして還元されるか楽しみだ。

中抜きされた取次は?

インターネットの発達により中間業者が淘汰される「中抜き」が様々分野で起きている。今回の件も取次からすれば「中抜き」そのものをされたと言える。じゃあ、このまま中抜きされ続けてしまうのだろうか。

インターネット時代の波に乗り切れなければ、淘汰の対象となりかねないだろう。インターネットの発達により出版物に限らず、物流は進化し続けているし、進化しないといけないという圧力にさらされている。その物流業界の進化の末には様々な商品に対応できる運送会社の拠点が誕生し出版物すら「商品ジャンルの一つ」にすぎない存在になるかもしれない。

というかAmazonは対一般消費者に対しては「お米1キロと掃除機1台と文庫本3冊と雑誌1冊」を一緒に売るというような、出版物を商品ジャンルの一つにすぎない扱いで物流を実現しているわけだし、出版社から書店・小売への物流だってどこかの会社が実現できるはず。

取次はそれよりも前に今ある出版社との取引のつながりと、書店との取引のつながりでより強固なネットワークを構築して、「求められるところに求められたモノを」、それどころか「求められる前に求められることになるモノを」行き渡らせる仕組みを作る必要が有る。

物流といえば、「血液」になぞらえることが多く表舞台には出てきていない印象があったが近年は、例えばヤマト運輸が新しい物流拠点を作っただとか、宅急便のサービス内容を一部変更しただとか物流関連のニュースがトップレベルの扱いで報じられていれて、佐川急便は米倉涼子のテレビコマーシャルをバンバン打っている。

出版物の物流を担っている「取次」も表舞台にもっと出てくるべきときがきたのではないか。