『アメリカン・スナイパー』を読んでいくと、映画版をはるかに上回る情報量があったことに気づいた。

そこで知らなかった単語や、興味をもった用語などにはマーカー機能を使ってメモを残していた。

読後の整理として、知らなかった・興味をもった言葉を一旦リストアップして、そのあと調べていこうと思う。

その中で今回は「トライデント」について

初出シーン

そもそも私はずっと思ってきた。SEALの実態を知りたいのであれば〈トライデント〉――私たちの記章であり、何者なのかを示すシンボル――を自分の力で獲得すればいいと。私たちと同じ訓練を受け、身も心も犠牲にして捧げる。私たちのことを知るにはそれしかない。

Kindle本『アメリカン・スナイパー』位置No.104

筆者まえがきの次の『プロローグ』の章にて書かれているこの文。この章には筆者が本書を書くに至った理由などが書かれており、直前には

自分の半世紀を世に出すということにいささかの抵抗を覚えている。

Kindle本『アメリカン・スナイパー』位置No.104

とある。そこには執筆にあたって「本にしないと見過ごされてしまう賞賛に価する人々の活躍を伝えたい」という気持ちの一方で「本にしたところでSEALの真の理解は得られないだろう」という気持ちが見え隠れする。

その中で「実態を知りたいのであれば自分の力で獲得すればいい」として登場した「トライデント」について、「獲得すれば何が見えてくるのか」(実際は無理だけど)、「SEAL隊員はトライデントにどのような思いを抱いているのか」興味をもったので調べてみることにした。

まずは「トライデント」をWikipediaで調べると

トリアイナ(ギリシャ語: τρίαινα、tríaina)、トライデント(英: trident)は、先端が3つに分かれた漁具あるいは三叉槍の一種。

Wikipedia

トリアイナとは、「3つの歯」を意味する。ギリシア神話の海神ポセイドーンが使用する三又銛、あるいは鉾としても知られる。

Wikipedia

とあり、 元はギリシャ神話で登場した神が持つ槍の種類のよう。

そのポセイドーンは

ローマ神話におけるネプトゥーヌス(ネプチューン)と同一視された。

Wikipedia

とあり、海王星の名前の由来ともなる水の神の得物を記章のモチーフに取り入れているのは海軍らしさを感じるところ。

記章としての「トライデント」

記章自体の写真はウィキメディア・コモンズにアメリカ合衆国海軍がアップロードしていました。(こういう、アメリカの各官公庁のインターネットへの柔軟な姿勢はつくづくすごいなと感心させられる)


ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)


記章にはその名にある「三つ又の槍」とワシ、そして錨の形が見て取れる(ここにも海軍らしさが感じられる)。そしてその写真が使われているWikipediaのページを見ると

The Special Warfare insignia, also known as the “SEAL Trident” or its more popular nickname, "The Budweiser" is earned after completion of BUD/S and SQT, is one of the most recognizable military badges of the United States Navy.

Wikipedia

とあり、BUD/S(Basic Underwater Demolition/SEAL 基礎水中爆破訓練)、SQT(SEAL Qualification Training SEAL資格訓練)を修了して渡されるバッジであるようだ。(つまりSEAL隊員でも規定の訓練を修了していなければバッジはもらえない。)

ちなみにどうやらニックネームとして"The Budweiser"というのが有名なようなのだが、その正式な由来はわからなかった。本文中にも

この紋章を〈トライデント〉と呼ぶ。俗に〈バドワイザー〉とも呼ぶが、由来がBUD/Sなのかビールなのか、人によって言うことがちがう

Kindle本『アメリカン・スナイパー』位置No.1825

といった記述がある。

SEALの伝統の中の「トライデント」

そして、このトライデントの記章は仲間の葬儀において、身につけているのをはずして棺に打ち付けるという伝統があり、SEAL関連の映画・ドラマではよく見かけるシーンだ。

その棺に打ち付けるという行為について、著者は

SEALであることを示すものは身につけている〈トライデント〉だけだ 。隊員であることを示す金属製の紋章だ。それを胸につけていなければ、ただの海軍野郎だ 。葬儀で〈トライデント 〉をはずし、倒れた同志の棺に釘で打ちつけるのが敬意の証になっている。同志を決して忘れない、一生心のなかに生きつづけるという意思表示だ。

Kindle本『アメリカン・スナイパー』位置No.104

と述べている。

クリス・カイルへの敬意

また最近、裁判の結果がニュースにもなっていたことで、『アメリカン・スナイパー』の著者のクリス・カイルは退役後PTSDの元兵士などにメンタルケアのボランティアなどをしていて、その中の一人に射殺され、その生涯を終えている。

2013年2月2日土曜日、テキサス州のグレンローズの射撃場にてPTSDの元海兵隊員エディー・レイ・ルースに(当時25歳)に射殺される。享年38。テキサス州立墓地に埋葬。

映画『アメリカン・スナイパー』パンフレット(編集・発行:松竹株式会社事業部)

そのテキサス州立墓地のウェブサイトを見ると、葬儀は密葬(a private service)にて行われ、葬儀の最後にはSEAL式の儀礼(a U.S. Navy SEAL "Hooyah" ceremony)で締めくくられ、100名以上のSEAL隊員のトライデントの記章が棺に打ち付けられたと紹介されている。



Texas State Cemetery

密葬だったゆえにSEAL式の儀礼("Hooyah" ceremony)が一体どのようなものだったのか知ることはできないが、写真に写っている棺に打ち付けらたトライデントの記章の数を見るだけでもSEAL隊員たちのクリス・カイル氏への熱い思いを十分に感じることができる。

「伝説」と呼ばれたSEAL隊員の死はともに戦った仲間のみならず、アメリカ国民全体に大きな悲しみをもたらした事件だったことだろう。

葬儀の前に地元テキサスのNFLチームのホームスタジアム、カウボーイズ・スタジアムで行われた追悼式では元アラスカ州知事のサラ・ペイリン氏夫妻を始めとした軍関係者やその他合わせて7000人近い人が参列していて、その規模に圧倒される。(参照:CBSNews)

まとめ

作品中には著者が「トライデント」のタトゥーを入れるタイミングに悩む描写がある。SEAL隊員になりたての自分にはまだ早いのでないか、と。

それくらいSEAL隊員にとってトライデントの記章は大きな意味を持つものであり、仲間が倒れた時にはその棺に記章を打ち付けて仲間への忠誠を誓う。まさにSEALの誇りを示す象徴であるように思える。

SEALを扱った映画・ドラマは多くあるのに自分はまだまだ見れていない作品が多い。

今後、それらの作品を見るときにはSEAL隊員がつけるこの「トライデント」の記章に注目したい。



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